嫌な人間の毒を受けて自分も嫌な嫌な人間になる。

ゾンビって、何が目的だかしらないけど人を襲って食べるだか齧るだかして、やられた人間はその菌だか毒だかの影響を受けて自分もゾンビになるんだったか。もっと古典的なモンスターだとドラキュラ。噛まれて吸血された人間も吸血鬼になると。どっちもフィクションで要するに昔話みたいなもんだけど、昔話にはつまり人間を戒める教訓があって、どっちもよくできた設定だと思う。害毒のようなものを他者にばらまいたり塗り付けたりする人間がいて、その害毒を受けた者も害毒キャリアになって、さらなる他者に害毒をばらまき伝染させるという。

今の実社会もなんら変わりない。当たり前のように、伝染現象は脈々と続いている。

教訓なんてものは各個人がいちいち意識して実行し続ける事で生きるものなので意識から流してしまえば何の効果も発揮しない。かく言う僕もそんなもんだ。適応障害に罹って退職し自宅療養して数か月になる。感情障害や恐怖感のフラッシュバックによる手指振戦はだいぶ収まってきたが、やられ続けたパワハラモラハラの影響を他人にばらまく事がある。

 

例えば運転中、人に寛容になれない…左右を見ずにボケっと道路を横断する歩行者や、車道の端ではなく中央をチンタラと蛇行しながら運転したり車道の右端をなぜか当然のような顔で走る自転車などを見かけた瞬間に、

『路上の常識知らねえのか馬鹿か。おめえらみたいなのがいるから事故率が減らねえんだ。』と頭の中で毒づき、嫌な氣分になる。

そして氣づく。これだ。僕が職場で言われた事そのものだと。

なんのことはない。僕がもう毒に侵されて嫌な人間と同じ事を他人に伝染させる怪物になっているだけ。八つ当たりと自意識過剰による思い上がり。その程度の僕だ。

自分に対して『胸糞悪い』とはまさにこの事で、まさに、いちいち意識して実行しよう。頭の中にファイルを作って生きよう。

 

ところであの、先ごろ逮捕された煽り運転のオジサンもこの自意識過剰ではないかと思う。被害者のドラレコ動画を見ると、大口開けて大声出して腕を大振りしながら迫ってくるのは『俺は強いんだぞ!!俺は強いんだぞ!!お前より強いんだぞ!!どうだ怖いだろう!!』という目いっぱいの威嚇(防御)を演出したんだろう。加えて、被害者が明らかに自分より弱そうだと外見で認識し、自分の乱暴な運転で委縮したのも観て暴力に及んだと解る。

『俺は強いんだぞ!!だからお前は言う事聞け!』…わかるわかる…(笑)そういうやつは日ごろ生きていてもお目にかかる。僕もそんな馬鹿思考があった、いや、今もある。

我ながら実にくだらない自己主張であり存在意義だと思う。

 

僕が今まで出会ったなかでは、尊敬したり好きになった人間は、相対する相手に安心感を与える人間だった。そうなりたいものだと思う。